桜田温泉の歩み

<1980年(昭和55年)開業時>
開業当時は、【泉温:60℃】【湯量:毎分30リットル】の自噴温泉でした。
タンクへ温泉を貯めて入換え用の温泉を補っていました。
泉温が60℃あり、当時は加水して湯温と湯量を調整していました。
「加水をしていない状態の時に入るとまるで別の温泉へ入っているようだ」
と、言われるお客様もいらっしゃいました。

源泉100%と加水している温泉の違いについて考え始めました。
また「ぬるい温度で長く入る」「熱い温度へさっと入る」など、
温度を好みで選ぶことができれば良いと考えていました。

<増掘するか、ポンプで汲み上げるかの決断>
昭和の終わり頃、増築を考えるも湯量が足らずポンプを使って汲み上げるか、
増掘して別な泉脈を当てるかの選択を迫られました。

新しい泉脈に当たればポンプは必要ないし、駄目でもポンプを入れれば良いだろう。という非常にポジティブな思考で増掘を決断しました。

増掘作業がはじまり、当初想定していた深度になっても脈に当たらず、増掘費用を考えると青ざめながら、温泉を汲み上げる為のポンプまで準備しなければと半ば諦めかけていた時でした。
掘削している岩盤のスライムが濃くなり、次に黄鉄鉱が混ざりました。
すると温泉が噴き出し、徐々に温度が上がり、湯量も抑えきれない程に増えました。
この時は、言葉にならないほどの喜びと、今までの緊張が一気に解きほどかれ、安心感でいっぱいでした。

そして【泉温:約75℃】【湯量:毎分700リットル以上】という、とんでもない源泉を手に入れることが出来ました。

余談ですが、あまりにも湯量が多かったため、目の前に広がる田んぼへ流れ込み、稲が枯れてしまったため生産者の方へお詫びと補償の相談に行脚したのも良い思い出です。

<温泉という地下資源と向き合う温泉利用>
開業からの湧出量変化から、温泉という地下資源は湧出した分を使っていると枯渇してしまう可能性があることを知りました。
現に桜田温泉は10年で約半分になり営業を維持できなくなりました。
そのため、使用湯量を決めバルブを絞ることで必要以上は出さないよう、温泉を地下資源として大切に管理しています。
しかし、あまりにも湯量を抑えてしまうと泉温が下がってしまうことも考えられるため、大露天風呂、家族風呂、室岩風呂など、浴槽は「広く」「深く」贅沢に造りました。

開業間もない頃の夏休みに台風が多く、お客様が海や川へ遊びに行くことが出来なかったため、檜風呂をぬるめにして子供たちに遊んでもらった経験を思い出し、大人も子供も楽しめるようにと、のびのびと泳げるほど大きな大露天風呂を造りました。(泳げるほど大きな露天風呂が平成2年完成)

<温泉の特性と給湯方式への気づき>
昔、檜風呂だけの頃の話ですが、「入れ換え直後のお湯と、翌朝のお湯が別物のようだ。」と、
お客様から言われたことがあり、その時は、単純に檜が温泉をやわらかくするのかと思っていたことがありました。
それからだいぶ経った頃、巷で「源泉掛け流し」という言葉が使われはじめ、そしてレジオネラの問題が起こった時、静岡県でも源泉掛け流し(放流式)について条例化されることになり、桜田温泉でも対応しなくてはなりませんでした。
いろいろと試している際にふと思いつき、【加水した風呂】と【源泉のみの風呂】が実際にどう違うのか比べてみたところ、心地よさ、肌触りなど、その違いに「こんなにも違うのか」と唖然としました。

昔、湯の入れ換えの時だけは温度調整のために加水していたため、湯の入れ換え直後は源泉100%ではありませんでした。
しかし、その後注ぐのは温泉のみであるため、翌朝には浴槽内がほぼ温泉のみという状態だったのでしょう。
これが、昔お客様から言われた「朝風呂が別の温泉のよう」という言葉の答えだったのでしょう。

桜田温泉の湯は源泉100%がそれほどに気持ちよくて、加水してしまうと分析表とは違う風呂になってしまうということだったのでしょう。

源泉湯宿を守る会の立ち上げ準備に参加していたため、
「源泉の個性を大切に、尚且つ衛生管理と両立することの大切さ」を勉強しているなかで、
これからの桜田温泉の特性を最大限に活かせる方法を考え、たどり着いたのが
源泉脈と浴槽を直結させた源泉冷却給湯装置である源泉脈掛け流しです。

<本物の源泉掛け流しの実現>
温泉の給湯契約には「毎分○リットル」「保障温度○℃」と決めているのが一般的であり、
「成分に関する保障」や「浴槽に対しての源泉比率の保障」などは知る限りでは見たことがありません。
桜田温泉では、この装置の完成によって、源泉の調査・検査の際に行われる採水と同じ条件で
浴槽に温泉を注ぐという、本物の源泉掛け流しが実現しました。
(平成16年、地中直結型 源泉掛け流しの実現)

現在、桜田温泉の浴槽内は、源泉比率100%、一切の加水なし、毎分200リットル(通常時)ほどを目安に管理しています。

<お風呂の衛生管理>
あるとき思いつきから、休館日には温泉を源泉温度のまま注ぎ、翌日まで自然に冷ます方法をとってみました。
そうすると浴槽内の温度が70℃近くなるため塩素殺菌の必要がなくなり、さらにヌメリも付き難くなりました。
それ以来、休館日のたび源泉による熱湯消毒をし、細菌対策などを塩素なしで行っております。
(排水溝や床などは、塩素系の洗剤にて定期的に清掃しているため、塩素系の臭いがする場合があります。)

桜田温泉のこれから
地球からの恵みを、これからも多くの方々のお役に立てますよう、安全管理を徹底しながら運営してまいります。

桜田温泉 山芳園
代表取締役 吉田新司